赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


匡さんが何を危惧して私ひとりでの外出を嫌がるのかは、話してくれないからわからない。だったら何も、そのルールを律儀に守る必要もないのかもしれない。

でも匡さんだって意地悪で言っているわけではないとわかっている。それなら、彼が話してくれるまで待つまでだ。

生まれてからずっと、匡さんだけを想い続けてきた私にとっては、待つくらいなんでもない。

そうまで思っているくせにこうして外に出たのは、外出禁止の理由があの女性だったら……という考えがよぎってしまったから。

匡さんに限ってそんなことはないと信じたいし、あんなシーンを見たにも関わらず実際信じてもいる。
でも、だからといって、不安がきれいさっぱり消えたわけでもない。

心の奥に無理やり押し込んだそれは、ふとした瞬間に脳裏をよぎり、心臓に嫌な音を立てさせる。

ここ数日はやけに気持ちがどんよりしたままだったので、気分転換もしたかったのだ。

そしてその考えは正解だったと空を見上げながら思った。家を出る前よりも空気が軽く澄んでいる。

色々な住宅を眺めつつ、三十分ほど歩き回った時だった。
後ろから突然、腕を掴まれる。

追って「美織ちゃんだよね?」と名前を呼ばれ振り向いて……目を見張った。


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