赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
リビングに入った匡さんは、庭先にいる相葉くんを確認すると、窓を開けて彼を呼ぶ。
そして、不躾に「庭師としての仕事以外のことはするな」と告げた。
私が出歩いていた理由を、匡さんは私が持っていたポスティング用の広告を見て気付いたようだった。
「匡さん、違います。私が頼み込んだから相葉くんは渋々任せてくれただけで、全部私が悪……」
「ああ、いいですよ。美織さん。庇ってくれなくても」
意外にも私を止めたのは相葉くんだった。
頭に巻いていた白いタオルをとった相葉くんは、いつものチャラチャラとした軽い笑みではなく、険しい表情を浮かべて匡さんを見ていた。
「こんな軟禁状態、可哀相だと思ったから俺の判断で仕事を頼んだんです。だって可哀相でしょ。本人は事情も教えてもらえないままずっと家から出るななんて、普通の結婚生活じゃ考えられないし、そんな勝手を押し通している力関係もどう考えてもおかしい」
匡さんは少しの沈黙の後、「なにも知らないおまえになにがわかる」と低い声で呟いた。
感情を抑え込んでいる声も、苦しそうな横顔も、とても匡さんのものだとは思えなくて驚く。
相葉くんはわざとらしくため息をついた後、匡さんを見た。