赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
「ごめん。最近……その、ちょっと眠れなくて」
「嘘ばっかり。美織さんって神経図太いし眠れないなんてありえない。どこでも寝れるタイプだってことくらい麻里奈にもわかる」
随分な言われようだけれど、事実なだけに何も返せずにいると。
「何かあったんでしょ。落ち込んでることもわかってるんだからね」
意外にも心配してくれていたらしい麻里奈ちゃんにそんなことを言われ、思わず顔がほころぶ。
でも、内容が内容なだけに話すわけにはいかないのが苦しいところだった。
好きになってもらいたい、信頼してほしいと望んでいる自分に今更気付いてしまっただとか、話したところで〝それが? なにか問題あるの?〟という反応をされるのはわかりきっている。
自分自身そう思うけれど……言葉にするのは簡単でも、気持ちの面ではもっと複雑でごちゃごちゃしているのだ。
嘘は一度つかれれば、それまでの思い出をすべて疑わしいものへと変えてしまう。
『別に、深い事情があるわけじゃない。美織は気にしなくていい』
あのとき、匡さんがついた嘘はそういうものだった。
平然と嘘をつく匡さんがまるで知らない人みたいに思えたし、私の気持ちを大事に扱ってくれないことにショックを受けた。
「ほら。またそういう顔して黙るし。……もしかして、あの女のことで悩んでる?」
「え?」
ソファに腰掛けたまま、私の顔を覗き込むように上体を低くした麻里奈ちゃんが続ける。