赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
向かいのソファに座った女性を指さして吠える麻里奈ちゃんを、滝さんが宥める。
女性は、〝沢井瑠美〟さんというらしい。
名刺は切らせているとのことで頂けなかったけれど、しっかり自己紹介はしてくれた。
さっき、モニターで沢井さんを確認した際の滝さんの慌てようは少し気にかかるものの、滝さんが家の中まで通すということは怪しい人ではなく、桧山家とそれなりの関係のある方なんだろう。
窓側、奥のソファに沢井さんが、ローテーブルを挟んで置いてある手前のソファに麻里奈ちゃんと私、という並びで、麻里奈ちゃんの横には滝さんが立っている。
今にも噛みつきそうなほど沢井さんを睨んでいる麻里奈ちゃんは滝さんに任せようと思い視線を戻すと、それを待っていたように沢井さんが笑顔を向けた。
「突然申し訳ありません。匡さんに連絡は入れたのですが、繋がらなくて……でも、きっと急いだ方がいいと思ったのでご自宅を訪問させていただきました。滝さんも、融通を利かせてくださりありがとうございます」
こうして正面から見ると、やっぱり綺麗な方だと思った。
整った顔立ちはもちろん、自信に満ちた表情もピンと伸びた背筋も、特別なオーラが……六年前のあの雨の日と同じ、私が背伸びしても手に入れられないようなオーラがある。
長い髪を耳にかけた沢井さんは、笑顔のまま続けた。