赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


「もともとは夜間保育に預けていたの。叔母さんの家に行くようになったのは小学校に上がってからね。お母さんの夜勤は十九時からだったから、それまでに美織の夕飯とお風呂を済まさせて、叔母さんの家に送り届けてそのまま仕事に行くっていう流れだった」

母の言葉に、その頃の生活を思い出す。
叔母さんはとても優しい人だったし、叔父さんもいつもニコニコとしていて印象がよく……なんと言っても、亡くなった父にそっくりだった。

元から人見知りするタイプではなかったものの、やっぱり父に似ているというのは慣れるスピードをかなり速めた。

だから叔母さんの家にお泊りに行けるのは楽しみで……でもそんなワクワクは最初の一週間ほどだけだった。その後の約一カ月は、恐怖の塊の時間だった。

まさか、いつもニコニコしている叔父さんが、家の中ではあんなふうに変わるなんて誰も思わない。

叔父さんは、いわゆるモラハラで、DV体質だったのだ。

特にお酒が入るとその傾向は強まり、叔母さんにも私にも強くあたり散らしていた。
なにかしら気に入らない部分を探し出しては怒鳴りつけ、ひどいときには物が飛んできたり直接手を上げられたりもした。

叔父さんは、家では私も叔母さんも体が震えるほどの勢いで怒鳴ってくるのに、一歩外に出れば穏やかな顔をして優しくなる。

その変わりようがとても怖かった。


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