赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


その頃は、その理由を深くは考えなかったけれど、あれはわざとだったのだろう。

自分の暴力が誰かにバレないように、どうかしているほど激昂しながらも自己保身の考えが働いていたからだ。

小学一年生の私が、叔父さんからつけられた痣を隠そうとしたのは、叔父さんをかばうためではなく、母が見たら悲しむと思ったからだった。

それに、浴びせられる怒鳴り声のなかには、母が私の存在を面倒に思っているに決まっているだとか、そういうものもあったから、そのせいもあったのかもしれない。

叔父さんの家で過ごすうちに、どんどん母に面倒くさく思われないようにという考えが植え付けられていくようだった。

学校でも自宅でも夢でさえ頭の中で叔父さんの怒鳴り声が響くようになった頃、叔父さんの家で事件が起きた。

酔った叔父さんが、リビングの隅で縮こまった叔母さんに怒鳴りながら、テーブルにあったお皿を掴み振り上げた。

私は止めようと必死に叔父さんの足にしがみついたけれど、当然力で敵うはずもない。

力づくで振り払われ、そのまま椅子の角に頭をぶつけた。痛みを感じた次の瞬間には頭から血が流れて顎を伝っていた。

びっくりして、どうしていいのかわからなくて、でも声を出したら怒られるから漏れそうになる泣き声を必死に我慢しながら涙を溢れさせていたとき、インターホンが鳴った。


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