赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
「父親に連れられるまま、月に数回会う度に美織はすくすく成長していって、いつの間にか会うのが楽しみになっていた。俺はたいして遊んでやるわけでもないのに、おまえはいつも俺の膝の上を選んだし、俺が戸惑うほどによく懐いていた。だからというわけでもないが、可愛く思っていた」
美織は素直で無邪気だった。それはきっと、里美さんが愛情を注いだ結果だろう。
そんな美織の様子の変化に気付いたのは、美織が叔父夫婦のところに行くようになって半月が経った頃だった。
元気がなく見え、周りにたいしてやけに怯えていた。
そう説明すると、美織は驚いたように目をしばたたいた。
「よく気付きましたね……」
「見ていればわかる。美織は、周りを気遣う優しさは持っていたが、周りの顔色を窺うようなタイプではなかったからな。どうしても気のせいだと思えず、叔父夫婦の家に足が向いて……あとは、思い出した通りだ」
「肩の傷、私のせいだったんですね」
申し訳なさそうに顔をしかめ謝ろうとする美織を止める。
「おまえのせいじゃない。俺が勝手にしたことだ。傷が残ったことを気にしているのかもしれないが、俺はこの結果でよかったと思っている。美織を守れてよかった」
微笑んで告げると、美織は目を見開き……それから泣きそうな顔で笑った。