赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
『何度いらっしゃられてもお通しできません。どうぞお引き取りください』
迷惑そうにしていたし、てっきり匡さん目当ての営業だとばかり思っていたけれど、あれは叔父さんだったのか……。
「何度か捕まえて手段は尽くしたがあの男にはなにも響かなかった。美織が高校二年生の頃、警察にも突き出して里美さんに待ち伏せ行為と付きまとい行為の証言もしてもらったが厳重注意だけで終わった。今度捕まえたら二度と顔を見せられなくなるような目に遭わせてやろうとは考えていたんだ。それが、あの日だった」
匡さんが言った〝あの日〟が、私が勝手にポスティングに出た日だとわかり、誰にでもなくひとつ頷く。
「叔父さんは、私からお金をとるために周りをうろうろしていたんでしょうか」
「そうだろうな。沢井さんからの報告によれば、未だ、ギャンブルばかりの日々を送っているらしい。最近執拗に接触を図ってくるのは、俺との結婚も理由にあるのかもしれない」
「そういえば……叔父さんは私が結婚したことを知らないはずなのに、どうしてあの家に?」
披露宴にも招待はしていないし、結婚したというハガキも送っていない。
もう父もその両親も亡くなっている以上、父側の親族との関係はほぼなく、さっき聞いた話によると、母が今も連絡をとっているのは叔母さんくらいだという。
あんな事件があった以上、母も叔父さんだけには絶対に連絡はとらないし現状だって知らせないだろう。
それなのにどうして……と不思議に思っていると、目を伏せた匡さんが小さく息をついた。