赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


「俺の結婚報道はいくつかの雑誌で取り上げられていたから、それを見て気付いた可能性が高い。美織の名前も写真も掲載させていないが、十五年前、美織を助けに入った後日、今後一切美織たちに近付かないようにと書面を交わしたんだ。立ち会った俺の父親が名刺を渡していたし、それを思い出して……といったところだろう」
「そうだったんですね……」

匡さんの話によると、小学一年生の頃の事件は警察には届けていないという。

叔母さんが止めたというのもあるし、マスコミが、被害者である私の元まで取材にくるのも危惧して、書面での約束事に留めたらしい。

匡さんの怪我の方がひどかったのに治療費ももらっていないどころか謝罪もなかったことを聞いて憤怒した私に、彼は「別にそんなものは最初から求めていない」とハッキリと言った。

「治療費や一度の謝罪で許された気になられた方が気分が悪い」
「そう……なんですか?」

まるで死ぬまで苦しんでほしいと言わんばかりのニュアンスに聞こえ、疑問形の相槌を打ってから、そういえばあれっきり怪しいインターホンがないことを思い出す。

だから、叔父さんと和解できたのかと聞くと、匡さんはなんでもない顔で答えた。

「その手の輩に見える強面の人間を雇って、あの男の前で里美さんの再婚相手を演じてもらった。まぁ、言い方は悪いが脅しだな」
「脅し……?」


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