赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
小さめのシュークリームだとしても、ひと口で食べられる大きさではなかったため、口に入りきらなかったカスタードクリームがあふれ出す。
こぼれないようにとそれを指で拭うと、それをまじまじと見ている匡さんの視線に気付いた。
「そうしていると、昔みたいだな。よく、シュークリームが上手に食べられないと嘆いていただろ。〝大好きなのに絶対こぼれちゃう〟と」
「……忘れてください。そんな昔話」
シュークリームなんて今だって上手に食べられない。
テレビで逆さにして食べるといいと聞いて実践してみたって、ひと口をとても小さくして気を付けてみたって、中の生クリームやカスタードクリームは必ずあふれ手にこぼれる宿命なのだ。
しかも、意図せず口に押し込まれたら誰だってこうなる。
だから半分以上は匡さんの照れ隠しのせいだと思いながらも口の中のシュークリームを飲み込んで、指についたクリームを口にしようとしたところで、その手首を匡さんに握られる。
お行儀が悪いと止められたのかと思ったけれど、視線の先で匡さんが私の指先に自分の口を寄せるので驚いた。
私の指をクリームごと口に入れた匡さんにただ驚愕していると、彼は私の指先に舌を這わせたあと眉を寄せ「……甘いな」と呟いた。