赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


「挙式は、ふたりきりだったしドキドキしながらも楽しめたかな。披露宴は……ちょっとあまり記憶にないけど、相当緊張したよ。匡さんが私の友達をたくさん呼んでくれていたから少しは解けたけど、桧山グループの会社関係者がすごかったから」

軍手をはめた指先で土をいじりながら説明する。

私だって三日前まで知らなかった結婚式なのに、どうして友達が知っていてしかも披露宴に出席できたのかと聞けば、匡さん側がしっかり日取りの三カ月前に招待状を送ってくれていたからだという。

そして、友達から私に何も問い合わせがないどころか、結婚式の話題すら出なかったのは、招待状に書き加えられていた〝美織には内密に〟という文言のせいだ。

いくらなんでも、プロポーズではなく結婚式を花嫁である私に内緒で行うなんてまずありえない。私側の気持ちの問題だってある。

それでも友達がみんなして当日まで黙っていたのは、私が普段から匡さんへの気持ちを隠さないでいたのが原因だろう。

私が匡さんを好きで好きで仕方ないことなんて、小学校から大学まで周知の事実だった。

高校二年生の頃、匡さんが大人の女性といるのを見て以来、匡さん本人に対しては好き好き言わなくなったけれど、母や友達にはそれまでと変わらず思いのたけを存分に話していた。

〝結婚したい〟くらいのことは平気で言っていたし、あまりに私が一途だからと呆れたりひいたりする友達だっていたほどだ。

そんな匡さんが私に内緒で結婚式を企てていたって、友達は私を心配するどころか、そのサプライズに乗って祝福するに決まっている。

正直、クールな匡さんがどうしてあんな無理のあるサプライズなんてしたのかは未だに疑問ではあるものの、あまりほじくり返して離婚されても困る。

もう聞けないので残念ながら答えは闇の中だ。


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