赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
ちなみに、ドレスはいつだったか母が急に持ち出してきたカタログの中から私が選んだものだったし、結婚指輪も同様だった。
その時は、ただ母とああだこうだ楽しく話しながら、金額関係なしに好みで選んでしまったので、あの意見が母を介して匡さん側に伝わったのだと知るなり後悔に襲われたのは言うまでもない。
唯一、普段使いしたら邪魔なほどのダイヤがついた婚約指輪だけはカタログで選んだものとは違っていた。私が選んだものよりも一桁金額が違いそうな輝きを放つ指輪は、せめてと毎日ベッドに入る前に眺めている。
結婚指輪は、私も匡さんも毎日つけっぱなしだ。こちらも値が張るものなので間違っても土いじりをする時につけていていい代物ではないとは思うものの、挙式で匡さんがつけてくれた指輪を外す気にはなれず、今も軍手の下の薬指にはまっている。
せっかくだから大事にケアしたいから、プラチナを磨く方法はすでに調べているけれど、一度も外せず今に至っている。
一度でも外してしまったら、夢から覚めてしまいそうで怖いのかもしれない。
「まぁ、桧山グループ御曹司の披露宴ですからね。政治家とか弁護士とか〝先生〟って言われる立場の人がわんさか出席してたんでしょうね」
「うん。匡さんが紹介してくれたけど、ほとんど右から左に抜けていった感じだった。笑顔を保つので精一杯で……緊張と慣れないドレスのせいか、招待客を見送った後、一度座ったらなかなか立ち上がれなかったもん」