赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


「ウエディングドレスって重そうですもんね。慣れない格好でどれくらい偉いかもわからないおじさん相手に愛想振りまき続けたらそりゃ疲れるでしょ。俺だって匡さん相手にはまだ緊張しますもん」

イベリスを植え終えた相葉くんが私を見て苦笑いを浮かべる。

「雅弘さんも美織さんも気さくだから話しやすいけど、匡さんは厳格な感じがするっていうか、こう、張り詰めたオーラがあるっていうか。間違っても恋だの愛だの言い出さなそうじゃないですか。だから、結婚するって聞いた時には相当びっくりしたし、今でもあの匡さんが美織さんに愛を囁いてるのかって考えると信じられないですもん」

そんな風に笑う相葉くんをしばらく眺めてから目を伏せた。

「囁かれてないよ。匡さんは別に、私を好きなわけじゃないから」
「え? 嘘だ。だって、匡さん側に気持ちがないのに、馬鹿でかい愛情抱えてる美織さんと結婚するはずがないじゃないですか。それに美織さんだって、匡さん側に愛の言葉どころか愛自体ないのに結婚したんですか?」

キョトンとした顔でもっともな質問をしてくる相葉くんに苦笑いを返す。

「うん。でも、私は匡さんが好きだからそれでいいかなって。だって、好きな人と結婚できるなんて、それだけで幸せなことだし。選んでくれたっていうのは事実だし」
「いやいや、そういう問題じゃないでしょ。美織さん側の気持ちはとりあえず置いておいて、匡さんがなんで好きでもない美織さんと結婚したのか謎しかないじゃないですか。美織さんって別にどこぞの令嬢ってわけじゃないんでしょ? それなら政略結婚って線は消えるし」

相葉くんが正論でグサグサと私の胸を突き刺してくるので、なんだか本当に心臓のあたりが痛い気がしてくる。

自覚していたことだとは言え、こうして第三者に声にされるとなかなか堪えるものがある。

< 29 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop