赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
「あの、私は別に体が弱いわけではありませんし、これくらい何の問題もないです。心配してくださるのは嬉しいですが」
もしかしたら誤解があるのかもしれないと思い笑顔で返したけれど、滝さんは引き下がる態度は見せなかった。
「匡様の奥様になられたのですから、他の男性とあまり親しくなられない方がよろしいかと。誤解を招きかねませんので」
今度は違う理由で家に入るよう促される。
滝さんの声のトーンから察するに、どうやら先ほどの気温の心配は建前で、本音はこちらのようだった。
「でも、敷地内ですよ?」
結婚した身なのだから異性との距離感は気を付ける必要があるのは私もよくわかっている。
他の人から勘ぐられるような距離感はよくないし、変な噂でも立てられたら匡さんにだけじゃなく桧山グループにも迷惑がかかる。
でも、ここは他人の目のない、桧山家の庭だ。何をそんなに気にする必要があるのだろう。
けれど滝さんは当たり前と言わんばかりの顔で答えた。
「美織様があまりに他の男性と親しくされていると、匡様が気を悪くされます」
「……されますかね? 匡さんは私にあまり興味はなさそうですし、大丈夫かと」
やきもちなんてまず焼かなそうだと思い本気で首を傾げる。でも、滝さんは呆れたように笑った。