赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
それなのに……匡さんは何も望んでくれない。
どうしてだろう、と思考回路が迷宮入りしそうになったところを、匡さんに咎められる。
「――考え事か?」
二十二時半のベッドの上。ふたりだけで使う寝室としては広すぎる部屋を今灯すのは、ベッドサイドにある小さな照明ひとつだった。
初めてのときからずっと真っ暗にして欲しいとお願いしているのに、私のその望みが叶えられたことはただの一度もない。恥ずかしいと主張する私に、匡さんは『そのうち慣れる』と言い切ったけれど、ベッドで体を重ねるようになって一カ月が経っても未だ慣れる気配はなかった。
もっともそんな恥ずかしさは途中でぐずぐずに溶かされてしまうのだけれど。
なにも身に着けていない背中に唇を寄せられると、そのわずかな刺激に体が小さく跳ねる。
くすぐったさもあるけれど、嬉しさが主な理由だった。
一カ月毎日のようにベッドを共にしていても、未だ、彼の手や唇が私の体に触れることが嬉しくて仕方ない。
好きで仕方のない相手なのだから当たり前だった。
「んっ……ぁ、違い、ます」
先ほどまでの行為の余韻のせいで体に力が入らない。
そのため、ベッドにうつぶせで臥せっている私の背中に、匡さんが何度もキスを落としていく。