赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
普段の匡さんはとてもビシッとしているからという理由もあり、そして、とくに恋愛感情を抱いているわけでもない私に触られるのも不快かもしれないという怯えもあり、日常生活の中では安易に匡さんに触れられない。
赤い傘の女性とのツーショットを見かけるまでは無邪気に抱き着いたり、腕を絡めたりと欲望のままくっついていたけれど、そんな行動も子どもっぽいかもしれないと思い、一度止めたらそこからは手を伸ばすのが怖くなってしまった。
だから、こんな風に思う存分匡さんに触れられる機会はベッドの上だけなので、ここぞとばかりに彼の胸におでこをすり寄せる。
拒絶せず、甘えさせてくれる匡さんに気持ちが満たされていくのを感じた。
私は恋愛もキスも匡さんが初体験だ。
でも、体を重ねる行為が必ずしも相思相愛という関係間で行われるとは限らないことも、気持ちがなくてもできてしまうことも友達の会話やネットからの知識で知っていた。
何も知らないまま匡さんと触れ合っていたら確実にうぬぼれて勘違いしていたと思うので、あらかじめ知っておいて本当によかった。
そう思うくらいに、匡さんはベッドの上ではいつもドロドロに優しく私を満たしてくれる。
きっと、私以外が相手でもベッドの上ではいつもこうなんだろうなと思うと静かな悲しみに襲われたりもするけれど、匡さんは今、私の隣にいてくれるのだから、過去に嫉妬していたところで無駄でしかない。
基本的に前ばかり見ようとする性格は子どもっぽく思え嫌でもあったけれど、こういうとき、くよくよ考えずに済むので助かる。
私が落ち着いた頃を見計らっていたのか、私の頭を撫で髪をいじっていた匡さんがしばらくそうした後「よく庭に出ているみたいだな」と話しかけてきた。