赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
「美織がそうしたいなら好きにすればいい」
文言は予想通りだったにしても、即答ではなく、むしろ気になる間があった。
答えに迷ったようにもとれる間を不思議に思っていると、匡さんが私を見る。
「ただ、日焼けには気をつけろ。春は紫外線が強い。昔から肌が弱くて日に焼けるとすぐ赤くなって痛むと泣いていただろう」
昔話を持ち出され、ふっと頬が緩む。
昔みたいに無邪気にじゃれつくことも〝匡くん〟と馴れ馴れしく話しかけることももうできなくなってしまったけれど、ふたりの間にある思い出話は共通していて、それが今も匡さんの中にもあるのだと思うだけで嬉しかった。
「はい」
「それにしても、そんなに花が好きだったのか?」
意外そうな顔で問われる。
興味を持たれているのが嬉しくて、顔がにやけるのは止められないまま口を開く。
「好きみたいです。花の特質を覚えるのも、自分の手で植えた蕾がどんな花を咲かせるか毎日観察するのも楽しいです。それに、土いじりは小さい頃から好きでしたし。ひんやりした温度や手に伝わる感覚が好きで……今思うと恥ずかしいですが、泥団子とかよく作ってました」
「ああ。何度か付き合わされた覚えがある」
「えっ……本当に?」
「ああ。泥が爪の中に入って取り除くのが大変だった」
「すみません……っ」