赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
「……匡さん」
「なんだ」
泥団子を宝物のように大事にしていたあの頃のように好きだと口にしようとして、やっぱりできなくて口を閉じる。
一度言えなくなった言葉は、なかなか声になろうとしてくれない。
それは、ただ単純に私が怖がっているだけかもしれないし、無意識にまだタイミングじゃないとわかっているからかもしれない。
「なんでもありません」
こんなに近くにいるのに、あの頃よりも匡さんがずっと遠い。
〝妻〟になれて体まで繋がれている上に心まで欲しいなんて……本当に欲張って頑張ってもいいのだろうか。
いつか、ずっと先でもいいから匡さんから好きだと言って欲しいと、そう願ってもいいのだろうか。
本音をぎゅうぎゅうに押し込んだ心が解放されたくてうずうずしていた。