赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
『普段はフライト中は眠れないし他人がいる空間で寝ようとも思わないが、美織がぐっすり眠っているのを見ていたら俺も気が抜けたのか、気付いたら寝ていた。数時間ほど記憶がない』
私の爆睡が少しでも匡さんの睡眠に繋がったらしいので、それがせめてもの救いだった。
フィレンツェにある美術館でゆっくりと芸術に触れる時間は私にとっては初めての経験でとても楽しかった。
匡さんが私が足を止めた絵画の前で色々と説明してくれたのも嬉しかった。
どんな画家が、どんな環境で描いたとされている作品なのかを話す匡さんの声が心地よくていつまでも聞いていたいと思ったほどだ。
『どうかしたか?』
『あ、いえ……なんだか珍しい橋だと思って』
館内の廊下で立ち止まると、匡さんが少し戻ってきて隣に並び、私の視線の先を追う。
そこには、川にかかる橋というどこにでもある景色が広がっていたのだけれど、その橋の造りが独特だった。
ただの橋ではなく、橋の上には三階建てほどのアパートが並んでいるように見える。
まさか橋の上に住んでいるのだろうか……と考えていると、匡さんが教えてくれた。
『あれは商店らしい。橋自体は七百年前に建てられたと聞くな。行ってみたいならこの後向かってみても構わないが』
『え、本当ですか!? 行きたいです!』