赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


『帰国してからは俺の家での生活となる。美織の荷物は里美さんに頼んで既に発送してもらっている。それ以外に必要な物があればすぐに用意するよう使用人には話をしてある。遠慮なく言ってくれていい』

里美は母の名前だ。
飛行機に乗る直前にメッセージで母からも桧山家での生活や荷物に関しては知らされていたため、驚きはしなかった。

『あ……はい。あの、匡さんのご実家での同居生活になるってことになるんですよね?』
『ああ。とは言ってもここ数年、父は一年のほとんどを海外で過ごしているし、家主は俺と美織だけだ。他に家事全般を任せている使用人がシェフを合わせて数人いる』

ほんの少しだけ、ふたりきりでの新婚生活を夢見ていたので若干のショックを受けながらも〝家事全般を任せている〟という部分が引っかかった。

『じゃあ、私は家にいて一体何をすれば……』
『何もする必要はない。ただ家にいればそれでいい』
『でも、それだと完全にお荷物というか……あの、ただ時間を持て余しても勿体ないので働きに出るのは……』
『ダメだ』

一刀両断され、一度黙った。

桧山グループの御曹司である匡さんのところにお嫁に行くのだ。
生活資金的には私が働きに出る必要なんてないのだろうし、桧山家の嫁が働きに出ていると周りに知られたら恥になるだとか、そういう事情はあるのかもしれない。

風評が大事なのは私にもわかる。
……でも、だからといって、家のことすらせずに毎日ただ食事をとって眠るのは、一般家庭で育った私からしたらすんなりと納得できるものではない。

それに、そんな匡さんにおんぶにだっこの生活は、私が目指す大人の女性から大きく離れる。


< 49 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop