赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
『あの、匡さんが私が就職するのに反対しているのは知っています。だから、大学でも就活はしませんでした。でも、私も自分自身の成長のためにも一度くらい社会に出て働いてみたいですし、短時間のバイトくらいなら……』
『美織』
履歴書の住所だけを見て私があの豪邸に住んでいるとわかる人は少ないだろうし、家から少し距離のあるお店なり事務所なりを選べば問題ないはずだ。
そう思い話し出したけれど、またしても言い終わる前に匡さんに止められてしまった。
名前を呼ばれただけなのに、ピリッとした空気を感じて黙った私を、匡さんがじっと見る。
『何度も言わせるな』
ゆっくりと、そしてはっきりと告げられた声色には、まるで私がわがままを言っているようなニュアンスが含まれていた。
それまでは、大人の女性になるために社会経験を積みたいと思い交渉していたつもりだったのに、匡さんにこんな風に言われてしまうと、そんなに子どもっぽいわがままを言ってしまっていただろうかと一気に恥ずかしくなり目を伏せた。
聞き分けのない態度をとっていると思われたのかな、と考え不安になっていると匡さんの指が私の顎をすくう。
距離を詰めた匡さんにキスされ驚いている私を見た彼は、『家にいろ。いいな』と言い聞かせるようなトーンで告げた。まるで子ども相手だ。