赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
雅弘おじ様は桧山グループ代表とだけあって、昔から仕事が相当忙しそうだった。
そのため、うちに遊びにきても一時間ほどで帰っていくことも度々あり、匡さんはおじ様と一緒に帰ることもあったけれど、ほとんどは私の『もう少し一緒にいたい』というわがままを聞き入れて、残ってくれていた。
そんな時は夕方なり夜なりにたしかに高級車が匡さんを迎えにきていた。あれを運転していたのが滝さんだったのか……。
だとしたら私のせいで余計な仕事を増やしたことになると思い「あの、その節はすみませんでした」と謝った私に、滝さんは笑顔で首を振った。
「いえ。美織様とお会いした後の匡様は、普段よりも雰囲気も柔らかくなっていましたし、匡様自身も楽しみにしておられましたから。私としてはいつも冷静で感情を見せない匡様が唯一、気が休まる時間だと感じていたので、美織様には感謝しておりました」
「そう……だったんですか?」
うちに来ていた時の匡さんを思い浮かべてみるものの、私には滝さんの言うようには思えずに首を傾げる。
匡さんはポーカーフェイスで感情がまず顔に出ない。
だから、私のおしゃべりに付き合ってくれている時も、私の勉強を見てくれている時も、楽しんでいたようには見えなかった。
決して、不機嫌そうに見えていたわけではないにしても、それは優しい匡さんが意識して表情に出さないようにしていただけで、実際は面倒だったとすら思う。