赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
たしかに、私がどんな性格かも知らないのに、使用人という立場の滝さんから私に昔話や雑談を振るわけにはいかないかもしれない。
滝さんは、私が〝まだ一緒にいたい〟と散々引き留めた匡さんを迎えに来てくれていたと言う。
そこだけ切り取れば、とんだわがままな性格だと思われていた可能性もある。
もう少し私が勇気を出して歩み寄っていれば、もっと早くから普通に話せていたかもしれないし、匡さんにも面倒をかけないで済んだかもしれないと思うと、申し訳なくなった。
匡さんに好きだと声にして伝えないようにしたり、飛びついたりしないようにと意識し出してからというもの、他のことに関しても色々臆病になっている気がする。
それだけあのツーショットが私にとってはショックで……言わば、初めての拒絶で、それが今も致命傷となり残っているのだ。
今思えば、それまで嫌な顔を見せずに私に付き合ってくれていた匡さんが、ただただ懐が深かっただけなのだけれど。
だからきっと、大人の女性になるために!と好きだと声にしないようになんて意識せずとも、どちらにしても私はもう安易に想いを告げるなんてできなくなっていたと思う。
いつか〝知っている〟でも〝ああ〟でもなく、断られるかもしれないという可能性を知ってしまったから。