赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


結婚式から今までの一カ月間、どのタイミングの匡さんを切り取っても、浮かれていたなんて表現は似つかわしくない。

いつだって匡さんはクールで淡々としていて誰よりもカッコよくて魅力的で……そして、私への態度に恋愛的な愛情は見つけられない。

愛情というかなんの感情もない、という表現が正しいかもしれない。匡さんにとって結婚生活のすべてが義務でしかなくて、優しいのも抱くのもその一旦で、無感情に思えるのだ。

「匡さん、昔は、もう少し気持ちを見せてくれていた気がするんです。私が幼かったから合わせてくれていただけかもしれませんが、今よりも匡さんを近くに感じていました。でも、ここ六年くらいは匡さんの気持ちが全然わからなくて」

その始まりがちょうど赤い傘の女性とのツーショットを見かけた時期と重なるから、余計に気になってしまうのだ。

匡さんに好きな人ができたから、私への態度が変わったんじゃないかと。

でも、それならどうして私と結婚したのだろう……と考え始めた時、滝さんが優しく微笑んだ。

「たしかにわかりにくい方ではありますが、冷たいわけではないですよ。ああ、でも……結婚を急いでいたという話ですが、もしかしたら祥子様に色々と言われて消耗されていたのかもしれません」

滝さんが苦笑いで告げた名前に、深いブルーのゴージャスなドレスに身を包んだ女性の姿が頭の中にポンと浮かぶ。


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