赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
桧山祥子。
雅弘おじ様のお姉さんで……私も結婚式で会っただけだけれど、頭からつま先まで品定めするように見られたためよく覚えている。
ものすごく厳しい眼差しを思い出し、背中がブルッと震える。
祥子さんに、私は多分……というか絶対によく思われていない。あの時の目線は間違いなく〝こんなどこの令嬢でもない小娘を選ぶなんて〟と語っていた。
たしか、麻里奈さんというひとり娘がいて、今は海外留学中だという話だったことを思い出す。
「披露宴で、一度だけお話ししました。健康状態を聞かれて、必要ならすぐにそういった検査をした方がいいと勧められました……。その、ちゃんと妊娠できるのかという意味合いだったと思いますが」
まさか式場でドレスに身を包んでいる中、そんな話題が出されるとは思わなかっただけに固まってしまったと話すと、滝さんは珍しくギョッとした顔をした。
「そんなことをおっしゃられていたんですか……。いえ、美織様との結婚が決まる前から跡取りがどうのと口うるさく雅弘様や匡様に意見していたのは知っていたのですが、まさかお式中にそんな発言をなさるとは思いませんでした。あのご家庭は親子揃ってお口がこう……達者でして。嫌な思いをされましたね」
「あ、いえ。大丈夫です」
同情するような眼差しを向けられ、慌てて笑顔を作る。
たしかに面食らってしまったけれど、匡さんが『こういった場所です。発言は選んでください』と対応してくれた。
それでも引き下がらない祥子さんだったけれど『そういったことは夫婦で決めますので』と匡さんがハッキリと告げると、顔をしかめながらも背中を向けた。