赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
捨て台詞は『どうせ取柄なんて若さくらいしかないんでしょうし、どれくらい持つか見物ね』だったっけ……と思い出す。
きっと誰が相手でも〝まだ結婚しないの?〟や〝早くふたりめを〟と言えちゃうタイプの人だ。
なかなか強烈そうな人だったなぁと思い浮かべながら滝さんに視線を向ける。
「匡さんがすぐに間に入ってくれたので、嫌な思いはしてないですが……でも、そうですよね。跡取りとか、桧山グループの問題になりますし周りは色々思いますよね」
匡さんは夫婦で決めると言ってくれたけれど、そういうわけにはいかないのかもしれない。
雅弘おじ様も結構呑気で朗らかな方だから忘れがちだけれど、あの桧山グループの御曹司である匡さんと結婚したのだ。
個人の問題だとか言っていられる立場ではない気がする。
世が世なら、世継ぎを生むことは絶対条件だろうし……そう考えれば、披露宴での祥子さんの念押しはある程度仕方なくも思えた。
だから、というわけではないのだろうけれど、匡さんとの行為の中で、避妊はしていない。
私はもともと子どもが好きで、将来の夢の第二位は幼稚園の先生だったほどだ。もちろん一位は匡さんのお嫁さんだったので、そちらが無事叶った今、未練はない。
それでも、やっぱり子どもは可愛いと思うし、自分の、しかも匡さんとの間にできた子どもなんて愛さずにいられるわけがないので跡取り云々関係なく今すぐにでも欲しいと思っている。
もっとも、こういう領域は神様しかわからないとよく言うので願うことしかできないけれど。