赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
一方の匡さん側の意見は聞いたことはない。
でも、新婚旅行中に迎えた初夜、『美織がまだ早いと思うなら避妊するが』と私に一度聞いてきて、私が大丈夫だと答えて以来、ずっと避妊はしていないので、妊娠に対して後ろ向きではないのだと思う。
頭がよく将来設計もきちんとしていそうな匡さんのことだ。欲しくないタイミングで子どもができるリスクを負うとは思えないし、避妊しないのはそういう意思表示ととって間違いない。
まだペタンコのお腹になんとなく手を当てていると、滝さんが言う。
「雅弘様はそうは考えていらっしゃらないようですが、祥子様はどうも一族経営をこのまま続けたいようでして。それなのに匡様に結婚の気配がないことを危惧して、縁談の話も散々持ってきては断られを繰り返していたんです」
「え……そうだったんですか?」
「はい。匡様は相手のお写真を見ることもなく断っていて、きっとお見合いを楽しみにしているであろう相手方が少し不憫に感じられるほどの冷たい対応でした。なので、美織様が心配なさるようなことはありませんから、安心なさってください」
お見合い相手の写真に見向きもしない匡さんが目に浮かぶようで、こちらまで居たたまれない思いになる。
私が幼馴染でなければきっと、匡さんの目にはどうやっても映ることはなかっただろうから、本当にラッキーだったんだなと自分の強運を感謝した。
昔からお地蔵様を見る度に手を合わせているけれど、これからも続けようと固く心に誓っていると、にこりと優しく微笑んだ滝さんが続ける。