赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
「そんなわけなので、祥子様は妊娠や跡取りについては今後も口を出してくるかと思いますが、あまり気にする必要はありません。あくまでもご夫婦の問題ですから、気をしっかり持って受け流してくださればいいかと」
笑顔を残した滝さんが、「では失礼しますね」と退室する。
テーブルに置かれた紅茶から湯気が立つ様子を眺めながら、ずっと疑問だったことがひとつ解けていくのを感じた。
『そんなボランティアみたいな感じで結婚なんてしないでしょ。気持ちがないんだとしたら、それなりの事情があるんだと思いますよ』
相葉くんが言っていた事情……そして、私も心の隅でずっと気になっていた、この結婚の裏にあるであろう事情。
口うるさい祥子さんを黙らせるために、匡さんは結婚を急いだのかもしれない。そして、同じ理由から跡取りを望み、私を抱くのかもしれない。
これだけの家柄だ。
花嫁は他の男性を知らない女性に限るだとかそんな暗黙のルールがあってもおかしくない。
跡取りの出生にどんな小さな汚点も許されない可能性はある気がした。
だとしたら、高校二年生の頃の早すぎる婚約にも、大学を卒業したその日に匡さんが迎えにきたことにも納得がいった。そして、結婚式の夜、さっそく旅立った新婚旅行にも。