赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


メッセージを受信した携帯を見るなり顔をしかめた匡さんが「少し出てくる」と言い残し席を立った。
そして、その数分後、庭の方から騒がしい声が聞こえてきたので何事かと驚きながらも窓から覗くと、そこには匡さんと、見たことのない女性の姿があった。

フランス人形のような愛らしい顔立ちをした女性は私より少し年下に見える。
髪は明るい茶髪で、ふわふわとしたパーマがかけられ腰付近までの長さがあった。

少しだけ吊り上がった気の強そうな大きな目が匡さんをじっと睨むように見ている。

隣で覗いていた滝さんが「ああ、麻里奈様ですね」と、やれやれといった具合でため息を落とす。

まるで〝いつものこと〟と言わんばかりの表情に、祥子さんのことを話してくれた時の滝さんが重なりハッとした。

「あ、祥子さんの娘さんですか?」
「はい。匡様の従妹の桧山麻里奈様です。今年で二十歳になられます。海外留学中のはずなんですが……きっと、どこからか匡様の結婚を聞きつけて帰国されたのでしょうね」

留学と聞いて、てっきり大学を通しての制度を使ったのだと思っていた。
だから、そんな理由で勝手に帰国を……?と一瞬驚いたけれど、追って、ああ、でもそうか、と納得する。

桧山家のお嬢様なのだから、留学くらい学校を通さずとも個人でどこにでもどれだけでも行けるのだろう。

窓を少し開けると、すぐに麻里奈ちゃんの声が飛び込んでくる。


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