赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


匡さんにあんな態度をとられて落ち込んでいないだろうか……という私の心配は、翌週月曜日に解消された。

匡さんが出勤したのを計っていたようなタイミングで現れた麻里奈ちゃんは、我が物顔で堂々とリビングのソファに座り足を組んだ。

それにしても、早い。まだ八時半だけれど、まさか他のおうちにもこんな時間にお邪魔していたりしないかな、と少し顔をしかめていると。

「なに? もしかして迷惑なわけ? そういう態度はわざわざ足を運んでくれたお客様に対して失礼じゃない? 愛想笑いのひとつもできないなんて、桧山グループには相応しくないと思うけど」

目ざとく指摘され、苦笑いをもらす。

お茶を運んできてくれた滝さんも他の使用人も、麻里奈ちゃんのことはあまり相手にしておらず、〝はいはい〟といった態度で、そんな様子に匡さんが言っていた〝常時反抗期〟という言葉が浮かんだ。

きっとあれは合っているんだろう。

「でも、落ち込んでいないみたいでよかった」と本音を口にすると、麻里奈ちゃんは思いきり顔を歪めた。

「は? 別に落ち込みませんけど。匡くんはいつもあんなものだし、ああいう態度をとるのも麻里奈には本音で接してくれているからだってわかってるから、麻里奈が気持ちを大きく持って匡くんを受け入れてあげてるの。わかりにくいけど匡くんなりの甘え方なのかもね」

そこで一度言葉を切った麻里奈ちゃんは私を見て口の端を上げた。

「なんて、麻里奈と匡くんが特別な関係だって言ってるようなものだし、美織さんショック受けちゃうかもしれないけど」


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