赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
「は? 匡くんが怖がりなわけないでしょ。どこをどう見たらそうなるの?」
私の目か頭がおかしいと言わんばかりの口調の麻里奈ちゃんに首を傾げる。
「怖がり……だと思うけどな。他人の怪我とか体調不良に対してすごく臆病と言うか」
昔から生理痛にむらがあって、ひどいと寝込むほどなのだけれど、匡さんはそういうとき、珍しく悲痛そうな顔で私のそばにいたし、風邪やインフルエンザのときも同様だった。
普段ポーカーフェイスの匡さんがそこまで表情を崩すことはそう多くないので、きっと、誰かが苦しんでいる姿を見るのが本当にとても苦手なんだと理解している。
あまりにそばに付き添い続けてくれるので、しまいにはこちらの方が申し訳なくなり落ち着いて寝ていられなくなったり、匡さんから漂うオーラがなんだか可哀相で『もう大丈夫』と嘘をついたこともあったくらいだ。
「嘘だ。匡くん、ママが盲腸のとき、すっごく騒いで痛がってたけど、表情ひとつ変えずに冷静に救急車呼んでたもん。それに、昔一緒におばけ屋敷入ったときも全然怖がってなかったし」
「あ、たしかにおばけとかそういうのは全然大丈夫だけど」
そう前置きしてから過去の出来事を説明する。