赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました
「昔、一度おでこを切って流血したことがあったんだけど、そのとき、匡さん、診察室まで入ってきて私が処置されてるのをずっと心配そうに見てたし、その後帰りの車の中でも離れようとしなかったから。そのときの匡さんがツラそうな顔していて、怯えてるみたいに見えたから、よっぽど怖かったのかなって」
たしか、私がまだ小学校に上がったあたりの話だ。
『もう、痛くないし怖くないから大丈夫だよ』
帰りの車内。後部席に並んで座った匡さんは私を見て、私よりもよほど痛そうな顔をしていた。だから、手を伸ばしてその頬に触れながら言うと、匡さんは私の手をとりきつく握った。
『おまえは強いな』
いつもはポーカーフェイスの匡さんが、なんだか泣きそうな顔で微笑むからなぜか私の方が泣き出してしまったんだっけ。
そして、ひとしきり泣いた後『匡くんのことは美織が笑顔にする』と宣言すると、匡さんは珍しくおかしそうに笑ったっけ。
そこまで思い出し、ふと不思議に思う。