赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


匡さんが寝室に入り、脱いだスーツをハンガーにかける。

使用人がいても、匡さんは自分のことは自分でするため、滝さんたちの仕事は家事代行業務と言える。

さすがに当たり前の顔をして着替えを手伝させていたりしたらなんとも言えない気持ちになったと思うのでよかった。

「他の男を紹介されたり、どこかに強引に連れ出されそうにはならなかったか?」
「他の……? 麻里奈ちゃんにですか? いえ。大丈夫でしたけど」

どうして麻里奈ちゃんが私に男性を紹介するのだろうといまいち質問の意図がわからずにいると、「他の男を美織にあてがい、浮気しているから離婚した方がいいだとか言い出しそうだと考えただけだ」と説明される。

そういえばたしかに、あの後やってきた相葉くんを見て騒いでいたっけと思い出す。

『なんで庭師とそんなに親しいの?! 怪しい! 絶対に何かある!』

麻里奈ちゃんがそんなことを騒ぎ立てた頃には、私もすっかり麻里奈ちゃんのそういう性格に慣れていたし、滝さんたちも同様で、誰も真面目に取り合わなかった。

『勘弁してくださいよ。俺、仕事口減らしたくないんで、雇い主の奥さんと不倫とかそんな馬鹿馬鹿しいことしないです。ドラマの見過ぎじゃないですか? こっちは生活かかってるんだから仕事先で恋だの愛だのにかまけてる暇ないんですよ』

いつもヘラヘラしている相葉くんが珍しく迷惑そうな顔でビシッと言うと、麻里奈ちゃんは押し黙り、その後は不貞腐れていた。

留学中の思い出話を聞きたいと話を振ったら、そのうちに機嫌も直ったけれど。


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