この恋を色で例えるなら
「澪ちゃんって言うんだね」
私はつい苦笑いをしてしまった。馴れ馴れしくされると一歩引いてしまう私の癖だ。
「…あっごめん、なんかナンパみたいになってるけどそういうのじゃなくて」
いえいえ大丈夫ですよ、みたいな感じが正解だろうか。とりあえず笑っておいた。

「俺は瀬田姿月ね。ここからちょっと離れた美大行ってる。あ、あと年齢は19で、えーとあとは…」
私の生徒証を見て個人情報を知ってしまった代わりに自分の情報も話した方がいいと思ったのだろう。
「あ、住所!住所はね…ちょっと紙に書くね」
いやいや、と声が出てしまった。
「あ、あの大丈夫ですよ。そんな危険な人だとは思ってないんで」
ほんと?よかった、と美大生…瀬田さんは言った。
「でもやっぱり住所渡しとくね」
は、はあ、と言いながら紙を受け取った。
ちょっと馴れ馴れしいけど、多分いい人ではあるんだろうなと思った。

「昨日写真撮らなきゃって言ってたけど、いいの撮れた?」
帰るタイミング失ったな、と思ってしまった。
「撮れなかったんで、もう前に撮った写真を使おうかなって…」
多分、この前の文化祭で撮った中でいいやつが何枚かあるだろう。
「使うってコンクールに出すとかそんな感じ?」
あ、そうか。なぜか部活の先輩と話している気分になっていたけどこの人は部活のこととか知らないに決まってるのか。
「明日、部内コンテストって言って部員だけでコンテストしてランキング付けするみたいなやつをやるので」
ええそうなんだ、と瀬田さんは絵を描きながら言った。
「じゃあ、写真部?やってるんだね。かっこいいじゃん」
急にこっちを見てかっこいいと言うから、少し驚いてしまった。
「…昨日の写真、あれ俺が台無しにしちゃった感じだよね、ごめんね」
瀬田さんは苦笑いして言った。
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