この恋を色で例えるなら


公園の前まで来た。
貰ってと言われたのに返しても面倒だと思われるかな、と思いながらも公園を覗いた。
ぱっと見いなさそうだった。昨日いた屋根のところにもいない。
もう夜だしいないか。部活だったから遅くなってしまった。


まあいいか。貰ってって言われたんだし。

いや、でもな。どうしよう。
ハンカチとかだったら貰っていたかもしれないけど、がっつりバスタオルなんだよな。
貰うのは少しためらう。

どうしようかなと考えていると、聞いたことのある声がした。

「澪ちゃん?」

瀬田さんだ。
私があっ、という顔をして振り向くと、瀬田さんは驚いた表情を浮かべた。
「どうしたの、もう7時半だよ」
瀬田さんは私のところへ歩いて来た。
「あの、タオルやっぱり返したくて」
私はかばんからタオルを取り出して瀬田さんに渡した。
「そんな律儀にしてくれなくていいのに、もう夜なのに危ないよ」
少し困った表情で瀬田さんは言った。
もう夏だから7時半になってもまだ少し明るいけど、瀬田さんは気を遣ってくれた。
「ここから家までどのくらいかかる?」
と瀬田さんに質問された。
15分と私が答えると、瀬田さんは15分か、とつぶやいて、
「送るよ。お家見られるのはちょっと怖いだろうから10分くらいのとこまで送らせて」
と言った。
「まだ明るいのでひとりで大丈夫です」
気遣ってくれたのはありがたいけど、送ってもらうなんて申し訳ない。
「俺が大丈夫じゃないから。夜に女の子ひとりで帰すわけにはいかないから」
私は言葉に詰まって軽く頭を下げた。
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