黒猫と竜は白薔薇に恋をする
このままでは先へ進まない。そもそもこんなところで、時間を浪費している場合じゃない。暁は本題を口にする。

「で、どうやって使うわけ?」

「簡単よ。ここへ入ればいいわ」

「……なるほど。空間転移ね」

「よく知ってるわね。さすが八代様のーー」

「ストップ。八代の話はやめて」


天然なのか何なのか。悪気がないのが、こわい。暁はカナタの手首を掴み、一応世話になった騎士の女へ礼を言う。


「ありがとう。……誰、だっけ?」


カナタはくっくっと可笑しそうに肩を震わせる。


「あー黒猫君ほんと最高。その子はエリザだよ。学園王側近の騎士ね」


「女のことしか覚えてないお前よりは遥かにマシだ」


段ボール箱の中へ足を踏み入れーーすうっと、たちまち二人の姿は消えてしまった。エリザは何事もなかったかのように箱を回収し、その場を後にした。



一言呟いて。



「伝説の竜も黒猫も、案外普通だったわね」


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