ママの手料理 Ⅲ
「……なるほどね、」


(あぁん?)


暫くチョコレートを口の中で転がしていたと思ったら、何だその感想は。


絞り出す様にそう呟いた湊の声を聞いて眉間に皺を寄せた壱は、言葉の真相を確かめるべく一欠片のチョコレートを口の中に放り込んだ。


緑色と茶色の混合物が、自身の舌で溶けていくのを感じる。



そして、次の瞬間。


「何だこの味、歯磨き粉じゃねーかよ!ふっざけんなクソ狂犬、ぶっ殺おおぉす!」


渋面を浮かべた元不良は、怪盗フェニックスに向かって強烈な力を含んだ双眸を向けながら、このチョコレートを自分に与えた家族の1人に向かって怒りを爆発させた。



悲しいかな、ミント味のチョコレートは湊と壱の口に合わなかったのである。








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「銃の二刀流ですか?馬鹿にしないで下さい、そんなんで僕に当たるわけないじゃないですか」


場所は代わり、貿易会社15階のエレベーターホール。


笹川 航海は、目の前で唾を吐き捨てた長身の男に喧嘩を売っていた。


色覚調整眼鏡をかけているから、銃口の向きや敵の出で立ちも鮮やかな色と共に理解出来る。


(銀河さんは僕に早く覚醒してもらいたいみたいですけど、)


「あ、当たっちゃいましたか?すみません、急所は外したはずだったんですけど」
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