ママの手料理 Ⅲ
自分の銃が火を噴き、男の脇腹に穴が空いたのを確認した航海はうわずった声を上げながら謝った。


もちろん、そこには何の感情も持ち合わせていない。


(色が分からないと大変なんですよね…)


全てがモノクロの世界だと、敵が持っているのが銃なのか他のものなのかを判断するのも苦労する。


「欲を言えば、正常な目を持って生まれてきたかったです」


どさりと大きな音を立ててその場に倒れた長身男を冷ややかな目で見つめ、血だらけの手から銃を2つ奪い取った。


「借りパクしちゃいました…怒られませんように」



怪盗フェニックスのアジトに入って闘い始めてからすぐ、大也とは別行動をする事になった。


何故なら、お互いに倒したい敵が被り、その度にじゃんけんやら言い争いやらで手柄を譲り合うという光景が何度も見受けられたからである。


お互いの関係性を悪化させない為にも別行動が最善の策だという事で話がまとまったのだけれど、後から考えると何ともおかしな話だ。



「大也さん、元気にやってますかね」


もう何階に居るのかすら分からない仲間の事を思いつつ、航海はとどめを刺そうと銃のスライドを引いた。


と。


「ヤ、ヤメロ……」


目の前で息絶えようとしている男が、か細い日本語を吐き出した。
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