ママの手料理 Ⅲ
湊さんは真顔で新たな怪盗の名前を出し、その余りのインパクトと衝撃に場は水を打ったように静まり返った。



(…何そのグループ、初めて聞いたんだけど)


あいにく、日本三大怪盗の知識すら持ち合わせていなかった私に世界規模の怪盗の名前なんて分かるはずがない。


そっと渋顔を作った私を尻目に、


「…怪盗、フェニックスですか?あの怪盗グループに、僕達が立ち向かうという事ですか、?」


航海が、恐る恐ると言った様にリーダーに向かって確認をして。


その質問にリーダーが頷いたのを見た瞬間、彼は何かを悟ったように静かに手で顔を覆った。


「レベチにも程があんだろうが…こっちは日本相手だが、フェニックスは世界を股にかけてる。どうするつもりなんだ」


他の怪盗との闘いでは我先に相手を殺そうと駆け出していたはずの琥珀の何とも言えない反応に、私はただ目を左右に動かして固まるしかなく。


「僕達は、現地に行ってそのティアラを盗もうと思ってるよ。確かに危険なのは分かってるけど、家族の頼みを飲まない訳にはいかないでしょう」


そんな中、牙をむき出して威嚇中の狼の様な凄みを放つ琥珀に真正面からそう言い放ったのは、何処か自信にまみれた仁さんだった。
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