ママの手料理 Ⅲ
でもごめん、僕は出来損ないだから。


今、何の感情も感じないんだ。



そんな中。


『…本当に良いのか?』


航海の想いをくみ取った銀河が、静かに問い掛けてきた。


「お願いします、銀河さんから言われる分には傷つきませんから」


航海は、両親に何かを言われた時以外で傷付いた体験をしていない。


『…分かった』


だから、銀河から言われる全ての侮辱の言葉を、両親が自分に向けて言っているように思い込む。


そうする事で、もっともっと強くなれる。


リーダーに対して感じるやり場のない思いも自分に対するマイナスな気持ちも、全部全部力に変えてやる。



フーッと息を吐いた殺人サイコパスは、ゆっくりと目を開けた。


『航海、お前はクズだ。世界で1番要らない人間だ』


イヤホンから聞こえる低い声をBGMに、航海は目の前の相手にスタンガンを押し付ける。


『お前は何で生きてる?存在意義なんてねーだろ、今すぐ死んじまえよ』


(これを言っているのは父親、父親…)


気絶して倒れ込んだ敵の顔を思い切り踏んづけた航海は、続いて近くで俊敏な動きを見せている女性をターゲットに捉えた。


『どうしてお前は言う通りに出来ないんだ、生き恥だよ』


(これを言っているのは母親、母親…)
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