ママの手料理 Ⅲ
ナイフを持って飛びかかってくるその女性をギリギリのところで避けた航海は、すかさずその腕に銃弾を食い込ませた。


『俺は、お前と出会った事を後悔してる』


痛みに泣き叫ぶ女性の手からナイフをもぎ取り、なんの躊躇もせずに急所である左胸を刺す。


『お前みたいに感情がなくていつもロボットみたいな奴、正直接し方が分からなかった』


溢れんばかりの貶し言葉が、航海の脳を支配する。


『俺とお前じゃ“惨め”の度合いが違う。けど、俺はお前に同情なんかしない』


目の前に、屈強な男が3人並んだ。



自分1人で闘えるだろうか、いや。


今まで以上に覚醒すれば、闘える。



『だってお前、両親から存在すら否定されてたじゃねーか。お前はそもそも』


航海は、震える手を握り締めてきつく目を瞑った。


銀河の言葉を全て両親の台詞に置き換えた結果、心の奥底から沸き上がる感情は怒りと殺意のみ。






『生まれて来なければ良かったんだよ』






彼の放った最後の一言は悪口の域を超え、航海の心臓に浮かぶ静かな水面を津波のごとく波打たせる。


(生まれて来なければ良かった、生まれて来なければ良かった、……違う、)


カッと目を見開くと、身体の芯から強烈な力と殺意が湧き上がってくるのが感じられた。


(この世界に生を授かった貴方達が全員、死ねばいいんです)
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