ママの手料理 Ⅲ
第4章

助っ人

今は何時だろう、自分達が此処に攻め入ってからどれ程時間が経っただろうか。


皆は何階に到達しただろう、流石に45階には行っていないと思うが。


誰か、自分と連絡がつかない事に疑問を持ってくれないだろうか。


そんな事は幾らでも考えられるのに、高杉 琥珀はこの密室から1歩も動くことが出来ずにいた。


というより、


(…駄目だ、死ぬ)


あれだけ見栄を張っていたけれど、誰からの助けも来ないこの状況に、琥珀は希望を失いかけていた。


警察官らしく脱出方法を考えているけれど、目の前にあるドアの前には自分を捕らえたフェニックスが居る。


スキンヘッドのそいつは地面に座り込み、銃を指でくるくる回して遊んでいた。


自分の後ろにはそれなりの大きさの窓があるけれど、ぱっと見た感じでは開けられる構造になっていないようで。


それ以前に、自分を椅子に巻かれている鎖と縄を解かない事には何も始まらない。


まあ、両腕が使えないから何も出来ないのだけれど。



「…おい、俺をどうする気だよ」


痺れを切らした琥珀がスキンヘッド男にそう尋ねたのと、男が地面に銃弾を撃ち込んだのはほぼ同じタイミングだった。


(チッ、また始まりやがった)


男は琥珀の質問に答えもせず、意味の分からない台詞を口走りながら床に穴を開けていく。
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