ママの手料理 Ⅲ
隣から聞こえてきたナルシストの声をしっかり無視した私は飛行機のチケットを受け取り、お礼を言ってそのまま自室へ駆け込んだ。


そのままのスピードで勉強机に向かって座り、そこに取り付けられた棚から勉強用に使っていたルーズリーフを取り出す。


本当は手紙用の便箋を使いたかったのだけれど、何せ手紙を書く相手が居なかったから持っていないのだ。


ふう、と一呼吸ついた私はルーズリーフを1枚取り出し、まだ塀の中に居る人物へ向けて手紙を書き始めた。



『伊織へ

元気ですか?あれからもう3年の月日が経ちましたね。

手紙の書き方が良く分からないので敬語で書いてみます。それと、また会えると思うので、愚痴とか文句は置いておいて要件だけを簡潔に書きます。


1月19日から2週間、私達は怪盗フェニックスが盗んだティアラを取り返す為に渡米する事になりました。
怪盗フェニックスはやたら強いらしくて、皆ちょっと不安そうです。怪盗OASISの幹部だった伊織が居れば、皆心強いんじゃないかなって思います。


伊織に会いたいです。伊織の作るタピオカも飲みたいです。

待ってます。



紫苑より』




「こんなんでいいのかな…」


人に書く手紙なんて数年ぶりだから、何だかまとまりのない文章になってしまった。
< 25 / 355 >

この作品をシェア

pagetop