ママの手料理 Ⅲ
「えー、今日お金ないんですよ…」


しかし、そんな彼をうまく手なずけている中森さんは天才だとしか言いようがない。


行ってらっしゃい!、と2人を見送った私は、ふーっと息を吐いて家に戻って行った。







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「伊織さんお疲れ様でーす、元気にやってますか?」



正午過ぎ、南山刑務所に響き渡った大声に反応し、早川 伊織は顔を上げた。


琥珀よりも高頻度で自分の様子を見に来てくれる彼女とは、彼女が仁と付き合っていた頃から仲良くさせてもらっていた。


「リンちゃん…来てくれたの?」


久しぶりの来訪者に心躍らせて口を開くと、


「はい。今日は紫苑ちゃんから伊織さん宛にこの手紙を預かってて、それを渡しに来ました」


看守さんと仲良さげに手を振り合ってすぐ、彼女は持っていたショルダーバッグから茶色い封筒を取り出して掲げてみせた。


「っ、紫苑ちゃんから…?」


途端、自分の身体がびくりと震えるのが分かる。


琥珀が自分を尋ねてやって来た時や、銀河と面会室で顔を合わせた時のように、おぞましい程の緊張と鳥肌が足元から身体中を駆け巡った。


「あーそうそう、これ、紫苑ちゃんから誰にも言うなって口止めされてるので、琥珀さんにも秘密でお願いします」
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