ママの手料理 Ⅲ
冷や汗が全毛穴から吹き出し、心臓が過去最大級の速さで体内に血液を送り出しているのを感じる。


(死ぬっ、……)


ティアラを掴み取る事すら出来ず、ひゅっと息を吸った私が、


「嫌あああぁああああっっ!」


と、泣きながら大声で叫んだのと、


「湊さん、後で僕の事殴って下さい!」


律儀に自己申告をした殺人サイコパスが湊パパを抱き締めるように覆い被さり、その右胸に植木バサミの刃を深く埋め込んだのは、ほぼ同時の出来事だった。










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「航海!」


琥珀の大声で、滝のように涙を流す紫苑ちゃんの方を見ていた俺ー伊藤 大也ーは我に返った。


そして、何が起こったのか、と琥珀が見ている方に目を向けた俺は、


(うわ、)


瞬時に全てを把握した。



「…すみません、湊さん」


怪盗mirageを代表する殺人鬼が直々に手を下した相手は湊の父親で、彼を見下ろしている航海の顔は後ろからでは良く見えない。


ただ、その2人の横に立っているあの壱があんぐりと口を開けているから、きっと湊の父親は防御の姿勢すら取れなかったのだろう。



実の父親が言うなれば赤の他人に刺されたというのに、俺達のリーダーはやけに冷めた目をしていて。


「ううん、大丈夫。……笑美、出来るね?」
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