ママの手料理 Ⅲ
航海の謝罪の言葉をしっかりと受け取った彼は、イヤホンを押さえて笑美に向かって話し掛けた。
『もちろんでございます。何なりと仰って下さい』
この光景全てを目にしているはずの家政婦の声はいつもと変わらないトーンで、ただ主人の命令を待っているだけ。
とうの昔に泣き止んでいた俺は立ち上がり、俺の鼻水の犠牲者となった琥珀の袖を掴んだ。
この状況で、湊がする命令なんて1つしかない。
だって、彼の父親は“俺達の生きる邪魔”をしたのだから。
「…命令だよ。この男を、今すぐ殺して」
『仰せのままに』
リーダーの声はやけに低く、怒りを押し殺しているようにも、悲しみを堪えているようにも捉えられた。
(っ……)
俺が右袖を掴んでいるのにようやく気づいたのか、琥珀の目がこちらに注がれたのを感じる。
直後、目の前を通り過ぎて行ったドローンが血だらけの男の前で止まり、笑美が大きく息を吸うのが聞こえて。
『戦闘用意、…始め』
果たして、この小さな銃の何処にそれ程多くの弾があったのだろう。
ババババンッ、と連射された弾は、全てが吸い込まれる様に男の身体に吸収されていく。
最期の最期まで憎たらしい笑顔でこちらを見つめていたそいつの目から生気が失われ、ソファーの上で息絶えるまでにそう時間はかからなくて。
『もちろんでございます。何なりと仰って下さい』
この光景全てを目にしているはずの家政婦の声はいつもと変わらないトーンで、ただ主人の命令を待っているだけ。
とうの昔に泣き止んでいた俺は立ち上がり、俺の鼻水の犠牲者となった琥珀の袖を掴んだ。
この状況で、湊がする命令なんて1つしかない。
だって、彼の父親は“俺達の生きる邪魔”をしたのだから。
「…命令だよ。この男を、今すぐ殺して」
『仰せのままに』
リーダーの声はやけに低く、怒りを押し殺しているようにも、悲しみを堪えているようにも捉えられた。
(っ……)
俺が右袖を掴んでいるのにようやく気づいたのか、琥珀の目がこちらに注がれたのを感じる。
直後、目の前を通り過ぎて行ったドローンが血だらけの男の前で止まり、笑美が大きく息を吸うのが聞こえて。
『戦闘用意、…始め』
果たして、この小さな銃の何処にそれ程多くの弾があったのだろう。
ババババンッ、と連射された弾は、全てが吸い込まれる様に男の身体に吸収されていく。
最期の最期まで憎たらしい笑顔でこちらを見つめていたそいつの目から生気が失われ、ソファーの上で息絶えるまでにそう時間はかからなくて。