ママの手料理 Ⅲ



「…大也、」


その時、少女の震える声が正面から聞こえてきて。


「あ、ありがとね!残り何分だった?」


てっきり残り時間が30分程あると思っている俺は、戻ってきた彼女を不安にさせないように笑顔になる。



「あと、」


それなのに、俺の笑顔に比例するかのように彼女の顔はどんどん強ばっていって。


(?)


笑みを称えたまま小首を傾げた俺の耳に聞こえてきたのは、




「あと、5分しかない……!」




想像よりも遥かに早くこの建物が崩壊するという、最悪な宣告だった。









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「ぬわんだってえええ!?後5分!?俺耳おかしくなった!?誰か紫苑ちゃんの言葉翻訳してえぇ!」


手を触れれば届きそうな距離に居る大也が血に濡れた髪を振り乱しながら叫ぶのを、私ー丸谷 紫苑ーはしゃくり上げながら見つめていた。


「まじで無理、俺ら後5分で死んじゃうの!?よし琥珀、今すぐ結婚式挙げよう。湊、神父役やってお願い!」


誰かが何かを言うより早く、私よりもパニックに陥った現役ホストは頬を手に添えてムンクの叫びのポーズを取りながら喚き始める。


「そういう問題じゃないだろ、頭冷やせクズ野郎!おい湊、爆弾の解除方法知ってるか!?」
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