ママの手料理 Ⅲ
湊パパの近くで爆弾の起爆装置を弄っていた壱さんがとうとうそれを放り投げ、大也に暴言を吐いた後、緊迫した表情でリーダーに詰め寄った。


「い、いや…爆弾なんて聞いた事ないし、僕もそんな知識はないんだよね…」


「どいつもこいつも使えねぇな!俺らはただ指くわえて死ぬのを待つってか?クソガキも救出出来ないなんて、怪盗失格だろうが!」


(ひっ、壱さん…!)


しどろもどろになって謝る湊さんを見て、イライラが頂点に達したらしい彼は傍にあったランプを投げ飛ばして豪快に破壊させた。


その大きな音に私は肩を上げ、大也はうおおお!、と大袈裟に耳を塞いで地面に横たわった。



今この場では私だけが泣いているけれど、良く考えれば皆気持ちは同じはず。


今怒りを顕にしている壱さんだって、怖いものは怖いんだ。



「爆弾の解除は諦めて、せめて紫苑さんを助け出しましょうよ。皆で抱き合いながら死ぬのも理想系かと思いますよ」


いや、航海に関しては“死”についてどう感じているのか分からない。


こんな状況でも妙に落ち着いている彼は、自分の命の炎がもうすぐ消える事に対して何の恐怖も抱いていないようで。


「でも出入口がないんだよ?檻に触ったら電気がビリビリくるし…いっその事、皆で触って感電してみる?」
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