ママの手料理 Ⅲ
「お前はさっきから何言ってんだ、全く説得力が無い上に支離滅裂な発言をしないでくれるか?頭が痛くなる」


全くもって理解不能な提案をした現役ホストに対して琥珀が虫でも見るような冷たい目を向け、それを見た彼は眉間に皺を寄せてのそりと起き上がった。


「後5分しかないんだからしょうがないでしょう!?琥珀だって死ぬのが怖いって言うんなら、何とかして生き延びる方法考えてよ!俺は皆一緒に助かりたいんだから!」


いちいち語尾にビックリマークが付く程の大声を出しているのは、それだけ彼が真剣にこの問題に向き合っているという事だろう。


「この際、ティアラなんぞどうだっていい。全員が助かるには何が出来る?お前ら今すぐ案出せ、出さねぇなら今すぐ死ね」


最後、既に息絶えた湊パパの顔を殴った壱さんは、若干スッキリした顔で私達の方へ向き直った。


しかし、その言葉は針よりも尖っていて。


(っ……、)


人間、死を目の前にするとこんなにも人格が変わるのか。


冥土の土産とは言えないものの、新たな発見をしてしまった。


気がつくと、私の頬を流れていた涙はとっくのとうに乾いていた。



「大丈夫ですよ壱さん。どちらにせよ、このままだと僕達はもう死にますので」
< 318 / 355 >

この作品をシェア

pagetop