ママの手料理 Ⅲ
「ちょっと航海、いちいちムカつく台詞言わないで貰えるかなぁ!?なーにが“もう死にますので”だよ!真面目に考えろってこのボケナス!」


「2人共、最後の最後に喧嘩しないで!」


「お前ら、真面目に考える気あんのかよ…」


直後、航海が懲りずに酷すぎる発言をしたから、大也がいつもの彼からは想像出来ない暴言を吐き。


慌てて湊さんが2人の口論を止めにかかり、遠巻きに彼らを眺めていた琥珀が宙を見上げてぼやいた。




…最後の最後まで彼ららしいというか、何というか…。


数分後には見れなくなってしまう彼らの姿を目に焼き付けた私は、体育座りをして小さく息を吐いた。



(皆一緒に死ぬなら、怖くないよね…)


そうして、爆弾と檻からの脱出という問題を完全に放棄した私が目を瞑ろうとした時。




「ちょっと静かにしろお前ら!まだ諦めるな!」


今までずっと沈黙を貫いていた銀ちゃんが、遂にその口を開いたのだ。



彼の声は良く通るから、全員が驚いた様に目配せをした後で口を閉ざした。


「実は…俺、その爆弾の事を知ってたんだよ。今は伊織が俺のパソコンで解体作業をしてるはずだ」


前髪を束ねた事によって顕になった双眸は狼の様に鋭く光り、見る者の目を奪う。
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